CW Audio Peak Filter

cocoaFilter

cocoaFilter を試してみたがすばらしい特性だ。cocoaFilterMac OS X 10.6 以降で動作するソフトウエアの CW audio peak filter (APF) 。接続は、FT-817ND の AF output を phone に切り替えて Mac の line in に接続する。間にアイソレート用の低周波トランスは入れずインピーダンスも気にしないでダイレクト接続で大丈夫。そして Mac にヘッドフォンを接続。入力レベルと出力レベルがメインィンドウで調整できるので便利だ。FT-817ND の AF レベルを少し低めに設定し、早速 40m を聴いてみる。
まずは IIR フィルタを試す。IIR フィルタは Infinite Impulse Response の略で調整は周波数と Q 値だ。周波数を 500Hz に設定し、Q 値を変更してみる。Q 値は 1〜30 まで変更できるが、10〜13 の間がいい感じだ。15を超えると風呂場に入ったような音に近づていく。さて 40m で都市ノイズに埋もれている S2 くらいの信号で FT-817 のフィルタを 300Hz にすると浮んでくる局を選び、FT-817 のフィルタを切ってこの APF を通すとノイズがスパッと切れてくっきり信号が聴こえる。すばらしい。

次に FIR フィルタを試してみる。FIR フィルタは finite impulse response の略で調整は周波数とフィルタ幅だ。周波数は IIR フィルタで設定した値が使われる。フィルタ幅は 20〜300Hz まで設定できる。先の S2 の弱い局でフィルタを 50Hz 絞っていっても聴きやすい状態が続いた。聴いた感じでは 200Hz くらいがいい感じかもしれない。これなら FT-817 のフィルタが無くても十分実用になる。すばらしい。

この cocoaFilter のよいところは、周波数、Q、フィルタ幅の調整がリアルタイムでグラフ表示されて特性が目視が確認できることだ。これはメニューバーの Window メニューから transfer function を選択すると表示することができる。また Prefarences では Input / Output の選択、そして IIR フィルタの Tilt いわゆるピークからのカーブ特性の設定、Limiter は soft, hard のモードで -20〜0dB まで設定できる。IIR Tilt は 0.5dB、リミッタの値は変えると音が割れやすいので 0dB のままとした。IIR や FIR フィルタの切り替えと Flat に戻すのもウィンドウから Tab View で簡単に変更できるので操作性もよい。

以前 id:macdeham:20071229 で作った AF LPF で聴くとちょっとキンキンした感じがしたが、この cocoaFilter では全くそんなことはなく調整すればとても聴きやすい音で聴くことができる。さすがに強力な信号が隣接しているとつらいが FT-817 でフィルタをかけるかリバースにして追いやるしかない。コンテストのようなシビアな場合も FT-817 の 300Hz フィルタと併用するといいだろう。それにしてもソフトウェアでこんなに特性のよいフィルタが作れるとはすばらしい。cocoaFilter のサイトには IIR フィルタと FIR フィルタのインプリされているコードが載っていて、cocoaFilter 自体の Xcode の Project ファイルも公開されているので自分でフィルタコードを書いてみるのもいいかもしれない。
さてこの cocoaFilter だが Mac が無いと動作しないので手軽に移動運用で使えないのが残念だ。もっともこのフィルタは都市ノイズに埋もれる微弱な信号を聴く時に十分に性能を発揮するので自宅で使うのがいいのかもしれないが、そんな微弱な局を FT-817 の 5W で呼んでも相手には届かないだろう。